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古い標本からの DNA 抽出および PCR 反応
吉澤和徳,大島一正(北大・農・昆虫体系)
2003.9.26
用途:シーケンス解析
抽出プロトコル
証拠標本を残して微小昆虫から DNA を抽出するを参照.ただし,ProK 処理をさらに長くした方がいい結果が得られるようだ(三日三晩).
PCR プロトコル
現在様々なプロトコルを試しているところです.現段階で行っている方法は以下の通り.
- あまり長く増幅するようなプライマーは使わない.500bp位で試し,うまく行かなければ,さらに内側にプライマーを設計し,より短い複数の断片を増幅する.
- 1st PCR を,プライマー濃度を2倍にして行う.アニーリング温度は普段通りか,やや低めに設定.
- 一回目のPCRでバンドが薄かったり,確認できないときは,1st PCR の産物をテンプレートに用いて2nd PCRをかける.その際,アニーリング温度をプライマーのTm値ぎりぎりか,それより少し高いくらいにすると非特異産物ができにくい.
- 断片化したDNAによりjumping PCR が起り,非特異的なバンドや,スメアが見られるときは,アガロースゲルを用いた切り出しを行い,それをテンプレートとして 2nd PCR を行う.
○ぽいんと
- 現段階では,20年前の乾燥標本から 400bp 程度の mtDNA の PCR 産物を得る事に成功しています.標本の状態に大きく左右され,酢酸エチルで殺した標本や,また,2年以上経過した70%液浸標本は,相当成績が落ちます.
(追記)200bp 程度を増幅するプライマーを用いる事で,さらに状態の悪い標本からも PCR 産物を得る事ができました.
- 古い標本には貴重なものも多いため,標本を完全に破壊するような抽出法はよほど個体数がふんだんにある場合などを除いて避けるべきと考えます.証拠標本を残して微小昆虫から DNA を抽出する方法は,このようなケースにおいても非常に有用です.ProK 処理を十分かける事で,サンプルを粉砕しなくても良好な結果が得られます.
以下の論文でこの方法を用いています.もしここに書かれた方法を引用される場合,以下の論文を引用してください.
Ohshima, I. & Yoshizawa, K. 2006. Multiple host shift between distantly related plants, Juglandaceae and Ericaceae, in the leaf-mining moth Acrocercops leucophaea complex (Lepidoptera: Gracillariidae). Molecular Phylogenetics and Evolution 38: 231-240.
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