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DNA 抽出用の標本
吉澤和徳(北大・農・昆虫体系)
2006.6.12
用途:シーケンス解析
シーケンス解析用の標本の保存に関しては,Fukatsu, T. (1999)
Acetone preservation: a practical technique for molecular analysis.
Molecular Ecology 8 (11), 1935-1945. が有名ですが,個人的な経験からのノウハウをいくつか列挙します.
- エタノールで問題なし:深津さんが書いているように,アセトンがベストのようですが,個人的にはアセトンはより揮発性が高く,標本が干上がる可能性が高そうなことと,あまりにおいが好きではないので,エタノールを使っています.
- 液の入れ替えが重要:採集直後は,虫から出て来た体液でアルコールが薄まったり酸化しやすくなったりします.採集から帰って来たらすぐに液を一回入れ替え,さらになるべく早くソーティングを行うことで,もう一回液を入れ替える事により,劣化がかなり防げます.これをやらないと,99% エタノールでも,標本の劣化が急速に進みます.
- 採集時は80%がベター:99% エタノールに入れた標本は,柔軟性が失われるので,チャタテムシのような軟弱な虫だと,触角や脚がすぐに折れてしまいます.特にフィールドでは標本に加わる振動も激しいので,80% で採集し,研究室で 99% にうつした方が,形態観察の利用には優れています.
- 80% 標本も以外と大丈夫:アルコールの劣化が進んでいなければ,80% エタノール標本も以外と大丈夫です.10年程度であれば,全く問題なく 1000bp くらい増やすことができます.20年前の標本からも上手く行った例があります.
- 乾燥標本も結構行ける:乾燥標本の場合,どれだけ素早く乾いたか,が重要です.酢酸エチルで殺した場合は,標本が長時間湿った状態におかれるので,あまり良くないようです.青酸カリがベストですが,危険なのであまり一般的には使えないでしょうね.乾燥標本から DNA を抽出する場合,脚などより速く乾燥する部位から抽出した方が良いようです.
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